1.顎が痛む
顎関節や周辺が、食べ物を噛む時や口の開け閉め、顎を動かした時(話している時)などに痛むのが特徴です。また、発症初期や炎症が強い時には何もしなくても痛む時があります。
咀嚼時の痛みには咀嚼した時の咀嚼筋の緊張による痛みと関節円板が下顎骨にはさまれてしまうことによっておこる痛みがあります。痛みを伴う顎関節症の場合には下顎骨の運動がなめらかに行われていない事が多くみられます。そのため、咀嚼筋の収縮がうまくいかず痛みが出てしまうのです。
咀嚼時の障害と言っても顎関節症のタイプによって障害は異なります。咀嚼筋の障害によって起こっているⅠ型の顎関節症の場合には、食事の際に咀嚼筋が疲れてしまい食事をとることができなくなることが特徴です。Ⅱ型とⅢ型の顎関節症の発症初期では、痛みの強さと開口障害によって食事を摂ることができないということがあります。そのため流動食を食事としている方もいらっしゃいます。Ⅳ型の顎関節症の場合には、開口障害による咀嚼障害が代表的です。
いずれの場合にしても顎関節症の症状を軽減するためには正しい咀嚼運動を行わなければいけません。
顎関節症の痛みには特徴があります。その特徴とは、顎関節を動かさなければほとんどの場合で痛みがあらわれないということです。それでも、ごくまれに何もしなくても痛みがあらわれる事があります。それは、外傷性の顎関節症の場合と顎関節症発症初期の急性期の炎症状態の時です。ですがこの痛みは、長期間続くということはありません。その為、何もしないのに顎関節部分の痛みが続くという場合には顎関節症以外の痛みを疑う必要があります。
顎関節症が進行すると、うがいをしたときにあごが痛むという方がいらっしゃいます。これは、うがいをした時に顎関節周辺が痛いというのは、口の中の圧力が高まることによって咀嚼筋の深部の筋肉である内側翼突筋が圧迫されることによる痛みと、関節が前方に引っ張られることによって関節円盤が圧迫され痛みが現れる2パターンがあると考えています。特に、関節円板が圧迫されて痛む場合のほうが痛みが強い傾向があります。
痛みの種類としては、鋭い痛みというよりは鈍い痛みの場合が多く、ピンポイントでここが痛いというよりはこのあたりが痛いというような感じの痛みの場合がほとんどです。
また、顎関節症が慢性化すると痛みが様々な所に起こってきます。多いのが首の痛み・頭痛・肩こりです。これらの症状は、、慢性期の顎関節症の80%以上の方に認められます。これらの症状の原因は、顎関節症の症状をかばうために起こる無意識での姿勢の変化にあると考えています。
2.顎を動かすと音(ポキッ・カクカクなど)が鳴る
顎関節症の患者さんの中には『カクカク』や『パキッ』、『ガクガク』などの音が顎関節を動か際に鳴る方がいらっしゃいます。この異音を医学的には、クリック音もしくは弾撥音と言います。これは、関節円板が前方にずれることによっておこるⅢ型の顎関節症の診断基準の1つになっています。厳密には、復位を伴う関節円板の位置異常であるⅢa型の顎関節症である可能性が高いです。
このクリック音は前方に変位していた関節円板が、開口動作による下顎骨頭の前方移動によって関節円板の下にもぐり込むことによって起こる反応です。また、閉口運動の際にも関節円板の位置から下顎骨頭が後ろに下がる際にクリック音がすることがあります。このクリック音は、開口時もしくは閉口時のみにおこることもありますが、開口・閉口共にクリック音がすることがあります。この状態を相反性クリックと呼びます。相反性クリックは、関節円板の転移が強いときに起こると考えられています。
3.口を大きく開けられない
顎関節症の典型的な症状として『口が開かない』という症状があります。この口が開かないという理由は顎関節症のタイプによって異なります。正常では、口を開けると指が縦に3本位入る状態です。指縦に2本以下の場合は顎関節症の状態と考えられます。これは、気が付かないうちに痛みをかばう為に動かさなくなり徐々に口が開かなくなる場合と、顎関節の構造異常によっていきなり口が開かなくなるという場合があります。
Ⅰ型の顎関節症の場合には口を閉じるための筋肉が硬くなってしまっているために、口を開こうとした際にこの口を閉じる筋肉が無理やり引き伸ばされることによって痛みが現れます。このように、口が開かない理由が筋肉の硬さであるために、力で口を開こうとすると痛みはありますが引っかかるようなことはなく開く傾向があります。
Ⅲ型の顎関節症の場合には、関節円板に引っかかることによって口が開かなくなっています。そのため、力を入れて口を開かせようとしても関節円板に引っかかって口が開くことはありません。ただし、Ⅲ型の顎関節症で関節円板の変位が強まって前方に強く移動してしまった場合には口が開くことがあります。
Ⅳ型の顎関節症の場合には、関節の変形の度合いによって様々な状態が認められます。
このように、顎関節症のタイプによって口が開かない理由は異なります。無理やり口を開こうとせず専門家に判断してもらった後に対処法を考えるようにしましょう。対処法を間違えると、顎関節症の症状を悪化させてしまうことも考えられます。
4.嚙み合わせが悪くなる
顎の関節や、咀嚼筋(そしゃくきん:噛む時に使う筋肉)がおかしくなると顎の動きがおかしくなります。例えば、鏡の前で口を大きく開けてみてください。この時に顎先はまっすぐ下に降りていますか?顎先が右や左もしくはS字状に動いていませんか?この動きの異常から、かみ合わせが悪くなってしまいます。このパターンは、背骨の動きゆがみや骨盤のゆがみ原因になっている場合が多くあります。
5.口を閉じられない
口を閉じられない方は、非常に少ないですが、顎関節の中で下顎骨が前にずれてしまい口が閉じられなくなってしまっている状態です。この状態が悪化した状態が顎関節の変形です。
6.耳鳴り・耳の閉塞感
顎関節症が慢性的に経過する事によって、顎関節周辺に腫れが起こってしまいます。この腫れが耳鳴りや耳の閉塞感を引き起こしてしまう事があります。耳鳴りや耳の閉塞感で耳鼻科に行っても異常がない場合は、肩凝りや顎関節症が考えられます。
7.肩こり
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顎関節症が悪化すると肩こりを強く感じる方が増えてきます。 これは顎関節症によって、顎関節の動きが悪化してしまい異常運動が起こることによって発生します。顎関節症の異常運動を抑えるために、最初は首や肩の筋肉が正常な方向に運動修正をかけます。ですが、顎関節症の症状が悪化すると徐々に運動修正が出来なくなってきます。その結果、運動修正をかけていた首や肩の筋肉は疲労がたまってしまい筋肉が張ってしまいます。これが顎関節症によって肩こりが起こる要因です。 |
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8.首の痛み
首の骨は正常な人は前方へ彎曲しているのが正常です。この首の骨の前彎によって、頭の重さの支持や頭部への衝撃緩和、正常な血液循環の維持が保たれます。
この状態が変形し首の骨がまっすぐ(ストレートネック)になると首の骨のクッション作用がなくなるとともに、背骨の上に頭がなく顎を身体の前に突き出すような状態になります。このような状態になると、首の筋肉は頭を支えるのに大きな負担となります。その結果、首の筋肉は硬くなってしまい、硬くなった筋肉によって首の神経や血管を圧迫してしまいます。その結果、咀嚼筋の過緊張や関節円板の損傷が起こる可能性が高まります。
9.頭痛
| 顎関節症の方の30%前後の方が頭痛を感じているという統計があります。これは比較的多い合併症と考えることができます。また頭痛が起こる部位としては、耳の上の側頭筋の辺りや頸から後頭部にかけて頭痛を感じている方が多いようです。
顎関節症が原因で頭痛が起こっている場合には、開口時に頭痛が悪化するという傾向がある場合もありますが、特に何もしていない安静時にも頭痛を感じていることが多いようです。また、耳の上の側頭筋部分を圧迫すると圧痛が現れることも多くあります。稀ではありますが、口をあけると目の奥に痛みが現れる方もいらっしゃいます。 |
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ですが、頭痛があれば顎関節症というわけではありません。頭痛が起こる原因には様々な原因があります。代表的なものとして片頭痛、後頭部の筋肉や軽痛が問題となる緊張性頭痛、自律神経の働きに関連する群発性頭痛、器質的病変を伴わない頭痛、代謝性疾患に起因する頭痛、精神的な問題が原因で発症する頭痛など様々です。頭痛が慢性的に起こり検査しても全く問題が見つからない場合には顎関節症が原因の頭痛かもしれません。
10.耳の症状
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顎関節症の方が、耳の閉塞感やめまい、耳鳴り、軽度の難聴などの耳の症状を訴えることがあります。顎関節症と耳の症状は関連しないように思われがちですが、実は密接に関連しているのです。 顎関節は耳のすぐ前方に位置しています。そのため、顎関節を固定している筋肉や靭帯が硬くなってしまうことによって、耳管にも非常に軽い力ですが常に力が加わり続けることになります。その結果、三叉神経が興奮してしまいます。そうすると、三叉神経に支配されている鼓膜の状態を管理している筋肉である鼓膜張筋が収縮してしまい、鼓膜が内陥してしまいます。そうすると軽い難聴が起こってしまいます。また、口蓋帆張筋や口蓋帆挙筋の収縮によって耳の閉塞感が現れます。 |
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また顎関節症によって、顎関節に分布する頸部交感神経の過剰な興奮が起こってしまうことによって、耳の奥にある中耳や内耳の血管が収縮してしまいます。その結果、内耳にリンパが貯留(内耳性リンパ浮腫)が起こってしまい、キーンというような金属音のような耳鳴りやザーザーといった波の音のような耳鳴り、フワフワするようなめまいが発症してしまう可能性があります。また、顎関節のゆがみが強く起こった場合には内耳神経が圧迫される事によって大きな音で耳鳴りが起こることもあります。
11.自律神経失調症
自律神経失調症で問題となるのは、身体の不調だけではありません。精神面の症状を伴うことが多くあります。
これは、特定の要因なくイライラする・落ち込んでしまう・怒りっぽくなる・不安に襲われる・情緒が不安定になる・集中力や記憶力の低下・物事に対する意欲・興味の低下・人との接触が嫌になるなどです。これは、健康な時には見られなかった症状です。ですが、このような症状があればすべてが自律神経失調症かといえばそのようなことはありません。体調がすぐれない時には、このような症状があらわれることがあります。自律神経失調症が影響しているのは、一番最初に記載した『特定の要因がない状態』という前提が付きます。
また、自律神経失調症で精神的な症状だけがあらわれることはほとんどなく、多くの場合は身体の症状を伴います。逆に考えると、自律神経系の乱れが起こることによって身体に不調が起こり、その結果精神的な症状が起こっているとも考えることができます。東洋医学では、精神は臓腑(内臓)に宿ると考えられています。この考え方が合致するのがこのような状態です。
このように精神的な状態が悪化すると、無意識に噛みしめをおこなってしまうことが増えてしまいます。その結果、咀嚼筋に問題が起こり1型の顎関節が発症してしまうことになります。これが自律神経失調症によって顎関節症が引き起こされる原因です。逆に顎関節症の症状が悪化する事によって食事を取ることができなくなってしまった結果、胃や腸の働きが悪くなってしまいその結果、自律神経失調症が発症するということも考えられます。
12.生理痛
顎関節症の症状があり、さらに生理痛や月経周期の乱れがある場合には、噛み合わせが問題でこれらの症状が起こっていることがあります。そして、顎関節症の治療を行い下顎骨の位置異常を正常化した後に、卵巣機能に影響を与える下垂体前葉ホルモンの分泌量を計測すると分泌量が変化し、生理痛や月経周期異常が改善したという症例報告があります。このことから顎関節症によって下顎骨の位置が乱れることによって、脳下垂体前葉ホルモンの分泌機構である視床下部ー下垂体系に悪影響を与えていることが分かります。
月経異常で器質的な問題がない場合には、ホルモンの乱れや自律神経系の機能異常、骨盤のゆがみなどが原因と考えられていました。ですが、月経異常でお困りの方は顎関節症も月経に影響を与えているということを知っておく必要があります。顎関節と月経異常は、身体の場所的に離れているので関係ないようですが、骨盤がゆがむと頬の骨の高さが乱れるところからも骨格としての関連も考えることができます。
特に、生理痛の痛みが様々な治療を受けてもなかなか改善しない場合には顎関節症が生理痛や月経不順の原因かもしれません。
13.三叉神経痛
三叉神経痛は、特発性の神経痛として代表的な神経痛です。特発性とは原因不明ということです。最近では、三叉神経痛の原因には脳腫瘍や血管による圧迫が認められるようになりました。ですが、半数以上は今でも原因不明の状態です。
三叉神経には3つの枝があります。一番上の枝は目から額部分に分布し、真ん中の枝は目から唇までに分布し、一番下の枝は口から下顎までを支配します。この3つの枝の中で、三叉神経痛が起こりやすい枝は一番下の神経線維です。そして一番下の枝に三叉神経痛が起こっている方の70%以上が顎関節症の症状があります。このように考えると、原因不明というよりは顎関節症によって咀嚼筋などの過緊張が起こり、その結果三叉神経を圧迫してしまい三叉神経痛が発症しているのではないかと考えることができます。三叉神経痛の症状としては、えぐられるような痛みや焼けつくような痛みが数秒間出現します。顎関節症の症状として、1回や2回はこのような症状を頬の部分や下顎骨周辺、耳の前に感じた方は多いと思います。
顎関節症のタイプ別症状
Ⅰ型顎関節症の特徴・症状
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Ⅰ型の顎関節症は、咀嚼筋障害によって起こる顎関節症です。そのため、顎関節周辺の筋肉付着部や関連部に広く痛みが認められます。 Ⅰ型の顎関節症の方が訴える症状としては、顎関節周辺の重だるさ、ぎこちない感じ、ツッパリ感、食事をしている時に顎がすぐに疲れる、話しにくいなど筋肉の活動に関連して疲労がたまることによって起こる症状を訴えられる方が多いようです。そして、Ⅰ型の顎関節症が進行することによって口が開かない、顎の回りを触ると痛いなどの症状が加わります。 |
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【顎関節症の付随症状】
○よく寝違いを起こす
○首が動きにくく、常に疲労感がある
○目が充血しやすく疲れやすい。
○慢性的に首から肩にかけてコリ感や重だるさを感じている
○耳鳴りやめまいを感じることがある
○耳閉感(耳が詰まった感じ)がする
○後頭部やこめかみに頭痛がある
○頬骨周辺の痛み
○原因不明の鼻詰まりがある。
Ⅱ型顎関節症の特徴・症状
Ⅱ型の顎関節症は、外傷によって発症する顎関節症です。そのため、Ⅱ型の顎関節症の方が訴えられる症状はけがによって関節損傷を起こしてしまった時と同様です。外力によって、関節包、滑膜、靭帯の損傷のため、顎関節の運動が伴う開口運動・閉口運動のどちらかに痛みがある場合や両方ともに痛みが現れることがあります。また、顎関節周辺の組織損傷があるため圧迫すると痛みがあります。損傷の程度が強い場合には、顎を動かさなくても痛みがあることもあります。
このような状態になると、顎関節を保護するために頸の筋肉や咀嚼筋など顎関節周囲の筋肉が硬くなってしまいます。咀嚼筋の状態が悪くなってしまうと、Ⅱ型の顎関節症の炎症が治まった後にもⅠ型の顎関節症が起こってしまい症状が長引く原因となります。
外傷の原因として、顔面部に横からの力が加わったときや抜歯をした時、長時間大きな口をあけた時などの発症することが多くあります。
○顎関節の運動に痛みが伴う
○顎関節部を触ると痛い
Ⅲ型顎関節症の特徴・症状
Ⅲ型の顎関節症の発症原因は、顎関節の構成要素である関節円板の異常によって起こる病態です。その為、顎関節内症も呼ばれます。この異常には、動きの中で関節円板と下顎骨頭の位置関係が正常な状態に戻る場合と戻らない場合があります。正常に戻るタイプをⅢa型顎関節症、戻らないタイプをⅢb型顎関節症と呼びます。どちらのタイプも口が開かなくなる開口障害が現れます。この開口障害は、Ⅰ型の顎関節症のように筋肉によっておこる問題とは異なり、第三者が無理に口を開けようとしても関節円板に引っかかっているために開けることはできません。
【Ⅲ型顎関節症の症状】
○口を開け閉めしにくいことがある
○口を開け閉めする時に”パキパキ”なることがある
○口を開けるときにまっすぐ開かず、どちらかにゆがむ
○顎関節周辺に引っかかりが起こり口が開かない
○物をかむときに顎関節部に痛みがある
Ⅳ型顎関節症の特徴・症状
Ⅳ型の顎関節症は、顎関節を構成する下顎骨の下顎頭と側頭骨の関節面に変形が起こってしまった場合に見られる顎関節症です。痛みは、開口時の顎関節部の痛みと関節部分を抑えた時の痛みがあります。顎関節の変形が進むと痛みが強まる傾向があります。
Ⅳ型の顎関節症は、関節自体が変形してしまっているので治療法としては手術療法の適応となる状態でもあります。ですが、痛みの程度が軽い場合や咀嚼運動には問題がない場合には、Ⅳ型の顎関節症であっても保存療法の適応となります。
Ⅴ型顎関節症の特徴・症状
Ⅴ型の顎関節症は、ストレスによって起こっていることが多く症状としてはⅠ型の顎関節症に近い症状が多いです。



